「アリとキリギリス」=「アリとセミ」?? その2
さてさて、そんなある日、偶然にも鹿島氏は知り合いの書いた本の一節にまた驚かされることになります。
それはフランス語の先生でフランス人を奥様にもつ、大矢タカヤス氏の「バイカルチャーものがたり」という本。
そのエピソードというのが、彼ら夫婦がシャンティイの森にピクニックに出かけたときのこと。
しんと静まりかえったその場所で、奥さんが突然こう叫んだそう。
このことばに驚いた大矢氏。「なにをバカなことを」と思いつつ、ふとそれが、リーンとかジージーと鳴いている虫たちのことだと気づいたそう。
そして彼は鹿島氏と同じように、家に帰るなりラ・フォンテーヌの寓話を引っぱり出して、そこに描かれた絵がどう見てもコオロギかゴキブリにしか見えないことを発見します。
そして次に彼は、バルザックやサガンなどの小説の中で、cigale が茂みの中や河原で鳴いていたことを思い出すのです。
さて、これはどういうことか?
バルザックやサガンのように、パリなど北フランス出身の作家たちはみな、cigale といえばコオロギやキリギリスのような、秋に鳴く虫たちのことを思い浮かべていたのです。
北フランス、シャンパーニュ地方出身のラ・フォンテーヌもまたしかり。
セミ cigale の語源はラテン語の「cicada」で、意味は「鳴く虫」。
そして、このことばが入ってきた時点で、北フランスにはセミは存在しなかった。
でも、ファーブルの住んでいた南フランスにはセミは存在していた。
それで、このような地方によってのちがう解釈が起こったのだそう。
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これ、わたしの中ではものすごーい大発見で喜び勇んで師匠に報告したのですが、(といっても本を読んでやっと分かったのですが)
このことについてなにも知らなかったにもかかわらず、彼にとってはそれほど興味をそそる話ではなかったんです。
そうですよね、フランス人にとっては、「アリとキリギリス」= La Cigale et La Fourmi がもう当たり前っていうか、そういうもんだって疑問にも思わないんでしょうから。
あっさり、「そんな虫の生態より、ぼくはそのエピソードのもつ教訓のほうがメッセージとして伝わってくるよ。」と返されてしまいました。
そんなメッセージ、いくら鈍感なわたしだって分かります!
わたしだって、虫の生態について語りたいわけじゃありません。
でも、語源や、同じことばの意味の取り違えなんかのことばのもつおもしろさが、日本人のわたしにとってはすごくすごく新鮮だったんです!
みなさん、どう思われますか?
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本当はこの本をみなさんに読んでいただきたいくらい、
その謎を解き明かした経緯と、納得のいく説明が詳しくされているのですが・・・。
ほかにも、フランスに関するいろいろな雑学が楽しめます。
(ちがうものもいくつかありますけど・・・)
まあ、興味のある方は読んでみてください。
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