「どのハエがあいつを刺したんだ?」
Coucou !!
工事の合間に、ちょっとひとことわざ・・・
今日は、わたしがよく師匠からいわれるこのひとこと。
「どのハエがあいつを刺したんだ?」
* mouche [n.f.] : 蠅
* l’ = le, la : 彼(彼女・それ)を
* a : avoir 三・単・直・現(複合過去の助動詞)
* piqué : piquer「刺す」過去分詞
もちろん、わたしがいわれるときは
になります♪
さて、ハエって『刺す』虫でしたっけ?
どうも師匠がいうのを聞いてると、la mouche はハエだけじゃなくて、蚊 un moustique やアブ un taon さえも、ちくりと刺すものをまとめてこう呼んでます。
ハチはまた別ものなんだけどね。
じゃあ、「どのハエがあいつを刺したんだ?」ってどういう意味?
師匠によれば、急に怒ったり、泣いてたと思えば笑いだしたり、(日本でいうならカラス?)そういうときにこういうのだそうです。辞書やフランス語雑学の本なんかだとどれも、「なぜあいつは突然怒り出したんだ?」となってます。
ある本で、この表現に関するおもしろい記事を読みました。ハエは、いろいろな嫌悪のもとになるというようなこと。彼らに刺されたばあい、人間なら不快感で済むけれど、馬や牛にとっては災いのタネになりかねない。馬は暴れだし馬車は大きな被害を被るだろうし、牛たちにとっては致命的でもある・・・
で、ハエに刺された馬が突然暴れ出すときのように、何の前ぶれもなく怒り出すひとのことをこういうのだそうです。
ちなみにハエは、ただの寄生虫や害虫というだけでなく、わたしたちのいう「ハイエナ」のようなイメージがあるみたい。なので、この mouche をつかったネガティヴな表現はここではご紹介しきれないほどいっぱいあります。
ラ・フォンテーヌの寓話に『駅馬車の蠅』mouche du coche という表現がつかわれているそうなのですが、
「何の建設的なこともせず、忠告だの励ましだの、さらには小言で働き手たちを悩ますばかりなのに、結局は成功を自分の手柄にしてしまう人物を指す」−フランス語成句の宝庫 より
さっきの「暴れ出す馬」やこの『駅馬車の蠅』という表現を読んで、学生時代に授業で読んだ、横光利一の『蠅』を思いだしました。
ただ蠅はそこに存在するだけ、居眠り御者の乗り合い馬車が谷底に転落していくのを見ているだけ・・・
(でしたっけ?わたしの記憶が正しければ。)
なぜかは分からないけれど、若かったわたしは、この淡々と描かれた短編にとても惹かれた記憶があります。ずっとそばにいて出発から転落までの一部始終を見ていた、たった一匹の小さなハエに思いを巡らせたものです。
あの『蠅』も自らは手を下さなかったものの、そっとあの悲劇の一端を担っていたのでしょうか・・・『駅馬車の蠅』のように。
そうは思いたくないです、個人的に。
って・・・なにを語っているのでしょう。
ここ、フランス語のブログでした♪
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