パリが恋しい。
初めてのフランス旅行では、ろくにフランス語が話せない、聞けないという状態で無理矢理ふたり旅を決行してしまったせいか、最初の二日間はものすごいアジアン・ブルーに陥りました。
パリに行ったことのある複数の友人から、『ルーブルで学生たちに嘲笑されて、ひどく落ち込んだ。』とか、『パリは2度と行きたくない。それならロンドンにいった方がいいよ。』とか、余計な事前情報を得てしまったこともあったんだけど。
買い物をするときうまく意志が伝えられなかったり、通りで人にぶつかってしまって怒鳴られたり、メトロやカフェでじろじろ見られたりすると、「ああ、わたしがアジア人だからなんだ」と勝手に思い込んで、いちいち落ち込んでしまったのです。
Du coup, en France, quand je n’arrivais pas à me débrouiller en faisant des achats, quand un passant me criait dessus à cause de mon inattention, quand les gens me regardaient curieusement dans le café, dans le métro, chaque fois je me suis sentie génée d’être asiatique, en repensant à ce que m’avaient dit mes amis.
でも三日目には、『わたし、日本人です!』って開き直ってみたら、何てことない、それは全然彼らのせいじゃなくて、自分が彼らに心を開いていなかっただけだとわかったんですけどね。
でも、今回は、冷たい視線を感じることすら一度もなかったんです。
(あ、一度だけありました。例の “Un jus de tomate, s’il te plaît.” と言ってしまったあのカフェの店員さんから・・・)
子連れ効果かもしれませんが、メトロの中でも、カフェでも、道ばたでも、目が合うと、みんな笑いかけてくれるんです。娘と目線が会うように、中腰になって話しかけてくれるマダムやカフェのおにいさんもいました。
Et puis, c’était peut-être parce que j’étais avec ma petite fille, mais que ce soit dans le métro, dans le café, dans la rue, les gens nous faisaient toujours de grands sourires. Il y a même eu des dames et des garçons de café qui nous ont parlé gentiment en se baissant pour se mettre à la hauteur de ma fille.
ファースト・フードのお店では、娘が覚えたてのフランス語を使いたがったので、ひとりで注文に行かせました。
親としては、「はじめてのおつかい」みたいにかなりドキドキだったんだけど、娘は笑顔で、トレイに彼女のフランボワーズのタルトと、頼んだ覚えのないふたつのカフェをのせて帰ってきました。
わけを聞いてみると、ふたつのカフェはおつかいのごほうびに、お店のお姉さんがプレゼントしてくれたとのこと。これって、日本ではありえないなあ、と思いました。
Mais elle est revenue le sourire aux lèvres, avec une tarte à la framboise pour elle, et deux cafés que je ne lui avais pas demandé sur le plateau. Je l’ai interrogée sur ce qui s’était passé : d’après elle, ces deux cafés mystérieux étaient une récompense donnée par une des vendeuses pour son bon français. Ça ne se fait jamais au Japon, j’étais très impressionnée.
自分が何もしなければ放っとかれる(放っといてくれる)し、何かを投げかければ大抵笑顔で応えてくれる、フランスって、本当に自由と個人を尊重する国なんだなあ、としみじみ感じます。
この国にいると心地いいなあ、と思うのは、Bonjour, Merci, Au revoir, Bonne journée がどこでも誰にでも気軽にいえること。それが当たり前だから、人と接するのがとっても嬉しくなります。
帰りの成田空港の入国審査で、無言でパスポートをやり取りしたときには、本当にフランスが恋しくて泣きそうになりました。
Au retour, à la douane de l’aéroport de Narita, lorsqu’on m’a rendu mon passeport sans un seul mot, j’ai été prise d’une grande mélancolie de la France et je me suis mise à pleurer.