DANS について、もっとくわしく。

先ほど書いた記事、「インターネットでの SUR と DANS について」

わたしの説明が稚拙で、誤解を招いてしまうようなので、
ちょっとここで修正と補足をさせていただきます。

インターネット上では dans という前置詞はつかわないみたい。
↓↓↓
「インターネット上に存在するもの」に関してdans という前置詞はつかいません。

以下、補足記事です。

❈ ❈ ❈ 補足記事 ❈ ❈ ❈

なのでもちろん、辞書 dictionnaire,livre, 新聞 journal などは dans をつかいます。
わたしもいただいたコメントと同じように journal の項でふたつの仏和辞典を引いてみました。

* lire qch dans ([話] sur) le journal
(別の辞書には「正しくは dans」と注意書きあり)

でも、lire qch sur le dico / sur le livre とは決していいません。仏仏辞典にもそんなことは書かれていません。

師匠の意見では、lire qch sur le journal なんて話しことばでもいわないって。

「新聞の1面記事とかなら『表面で』という意味でつかわれてもおかしくはないんじゃない?」っていってみたら、「なるほど、最初のページならそういえるかもしれない」と。

さて、フランスと日本では、ものや空間のとらえ方、つまり外界のものがどの部類にはいるか、どんな位置関係か、という概念に大きなちがいがあります。

辞書や本などは、ぱたんと閉じることができる、あいだにものを挟むこともできる、物理的な空間になると思うのです。

例えば dansMediaDico で引いてみましょう。

> dans
(préposition)
* A l’intérieur de :「〜の内側に、〜の内部に」
* Au sein de :「〜のただ中に、〜に包まれて」
* Au bout de, après :(これは時間的概念なので、またこんどに。)

地図や写真などの場合には sur をもちいるようです。
なんとなく感覚的に理解できたかしら?

そして、ネット自体がリアルな空間ではないので・・・
常に画面上 sur l’écran またはデスクトップ上 sur le bureau にあるものなので、 sur であらわすのです。

うまく説明できませんが、師匠によれば「コンピュータの世界」では dans もつかってしまうけれど、sur をつかう方が正しい、ということです。

また、sur について仏和を引いてみるとこんどは、

*[媒体を通して] ・・・で

これもね、やっぱり媒体っていうのは『物理的空間論』(と勝手に命名)を分かりやすくひとことにまとめたんだと思います。これにも、師匠も同意。

媒体を通したからって、常に sur をつかうわけでもなく、そういう決まりもないのだから、「和仏や仏和の辞書をうのみにしないように」と師匠からみなさんへのメッセージです。

わたしも、ともだちのフランス製仏和辞典見せてもらったけど、VOW にのってる中国のおかしな日本語看板みたいで、N’importe quoi !! でした。

フランス語が母国語である彼にとっては、そんなに深く考えたこともなかったそうなのだけど、わたしの『物理的空間論』を聞いて、それならほとんどのことに説明がつく、と同意してくれました。

それで、さきほどおはなししていたフランス語、意味の散策―日・仏表現の比較という本の中で、ちょうど dans についての項目があったので、読んでみました。

Dans にはほかにもいろいろな意味がありますが、今回は位置的な意味についてだけ、おはなしします)

やはり、「囲まれた空間」の中(=内部)のことをいうとき、dans をつかうのだそうです。たとえば、ビンの中、森の中など。

「雨の中」ではなく「雨の下でsous la pluie となるのも、フランス語の外界のとらえ方としてはこの「内部」という概念に当てはまらないからなのだそう。

英語だったら in the rain になるわけだから、これはフランス(もしくはラテン系?)特有の発想なのかしら?

師匠、「雨の下に」いるおかげで雨はラッキーにもぼくらの頭の上で止まってる、なんていうから、わたしは「なるほど、それでフランス人は傘をささないんだ!」なんて、それこそハチャメチャな意見まで!

話をもとに戻しましょう。

じゃあ、たとえば「テントの中」なら囲まれているので dans になりそうなものですが、フランスでは、テントは『屋根』ととらえられているので、やはり雨と同じく sous la tente となるそう。

おもしろいのが、「道」のとらえ方。Rue はもともと「街の通り」のことで、dans la rue となります。「ヨーロッパの都市の道がかなり前から高い建物に囲まれていたことと無関係ではないと思います」とはこの本からの抜粋。

ちなみに sur la rue だと「道に面して」となっちゃいます。

なので、「小道」と概念のある chemin,(これは野の小道などもありえるから)「町と町をむすぶ」道である route などには sur le chemin, sur la route というぐあいに sur をつかうんですね。

そして、さらに興味深いのが、廊下や階段のとらえ方。これもフランス的概念では、「囲まれているもの」にはいるらしい。廊下は壁・部屋などに囲まれているのが想像できるけれど、階段は、手すりまでふくめて考えているらしいのです。

なので、

dans le couloir
dans l’escalier

となります。

では、 dans la maisonà la maison のちがいは?

例をちょっぴり。

1. Je suis dans la maison.
2. Je suis à la maison

1. の文章は「わたしは家の中にいます」となり、「建物の中」にいる必要があります。

2. は「わたしは家います」つまり「(外出ではなく)在宅している」ということです。在宅していれば、庭にいようと玄関先にいようとかまわないのです。

(このへん、多少抜粋させていただいてます)

こんな、フランスと日本での、根本的な外界や事物のとらえ方のちがい、とってもおもしろいとおもいませんか?
興味のある方は読んでみるといいですよ。オススメの本です。

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